2013年4月15日月曜日

映画が娯楽だった頃

私がガキだった頃、土曜日の娯楽というと映画だった。もちろん映画館等、年に数回も行けないのでもっぱらTVのB級(以下)の映画だ。
もちろん娯楽だった事もあるが、そもそも映画に詳しい訳でも無いので映画のタイトルを見てもそれがどんな映画かすらわからなかった。
という訳で「巨大アメーバの逆襲」だろうが、さっぱりわからない芸術映画だろうが「ゴリラの逆襲」(なんか3Dのヤツ。…また逆襲かよ)だろうがとりあえず見ていた。土曜の昼間は家にいるのは私ぐらいだったので自由にTVを見られるというのもあった。

そうやってボンクラが量産されてゆく…というのは全くその通りで一応社会人になった私は土曜には時々映画館に行くような暇人になっていた訳だ。…暇。今では1週間で1時間すら感じ無い「暇」という暇だが当時はアラブの油田が如く(古い表現だが)無限に時間があるように感じられた物だ。当時は客の入れ替えも無く(幾らでも見ていられたらしい。私は根性無しなので一回見たら外に出た)、地方では二本立てが当たり前(そこそこ有名な作品と全く無名or売れない作品の組み合わせ)だったので、「田舎の無人のガソリンスタンドで爺さんがただ後悔してるような作品」でも普通に観てた。フィルムは傷だらけで時にはバッツり切れて終わったり…そういう演出なのか!と思ってびっくりしたらフィルムがぶっちぎれたらしく映画館から全員叩きだされた。金?もちろん帰ってこない。でも驚かなかった。何故なら映画は娯楽だったからだ。

映画が娯楽じゃなくなったな、と感じたのは値段が高いな、と感じる以上に時間を確保できなくなったからという気がする。どうしても三時間を映画に費やす気にならない。自分でもなんと贅沢になった物だ。と思うのだが、週末に映画を何本も見ていた人に対して思った印象は「羨ましい」だったのが今では「そりゃ大変そうだ」としか感じない訳で100回以上見たブルースブラザーズやエクスカリバーを見た時間はどこから調達していたのだろうと不思議に思う。ひょっとして星新一の作品のように未来から拝借したのだろうか。そんな訳でもうレンタル屋に通う事も無く、そもそも会員証すら更新しておらず、まだ観ていないビデオテープとDVDが積まれる段階になって初めて「ああ、映画は娯楽じゃなくなったんだな」と感じる。昔の映画は面白かった、とか聞くがそれは映画が「娯楽」だったからなのだと思う。私はパチンコも麻雀も面白いとは思わないが、それが娯楽だと思う人にとっては楽しいのだろう。だから同様に今でも映画が娯楽の人もいるのだろうし、単に私にとって映画が娯楽では無くなったんだろうと思う。

昔、イギリスの映画だと思うが爺さんがナポレオン戦争の頃の戦場をメタルフィギュアを丹念に作ってたらそれを誰かに全部ぶっこわされるような酷い映画があったのだが、真剣に時間を掛けてメタルフィギュアを着色する爺さんを観て「そういう余生もあるのかもな」なんて思ったりした。一瞬だけど。でももうそんな瞬間は来ない来ないんだろうなぁ、等と人生がロスタイムになってから思うのは皮肉だなとか思う。それとも時間の網に裂け目があってどこかから漏れているのだろうか?ジャネの法則みたいにどんどん時間が早くなっていくのか?

友人と話した時に「今の記憶を持って高校とかに戻りたいとか思わないか?」とか聞かれた時、私は「いや、絶対に戻らない。戻りたく無い」と言った。そりゃあ確かに酷い物だったし、今なら「遙かな町へ」みたいに勉強も楽しく思えるのかも知れない。でも土曜の午後に見たほとんど思い出せない映画を観た時間も…いや、本当に全然思い出せないんだけど…貴重な…段々自信無くなって来たな、…時間を湯水のように使ったあの頃はきっと貴重だったんだと思う。

何故なら映画は娯楽だったからだ。

RRR

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